あの人は今vol9:神谷 俊さん

マイナビ卒業生は今、どこで何をしているのかを追う「あの人は今」。今回は神谷俊さんを取材させていただきました。

神谷さんは2007年にマイナビに入社し、就職情報事業部や教育研修企画部(現教育研修事業部)で活躍しました。2016年に退社し、株式会社エスノグラファーを設立。企業のリサーチを主に手掛けています。

エスノグラフィーというリサーチ手法を用いて、社名にも冠している神谷さん。果たしてエスノグラフィーとは?奥深い世界と、マイナビアルムナイのその後の活躍をご紹介!

(取材:羽田啓一郎)

マイナビ在籍中に大学院進学。その後独立!

ー今日はよろしくお願いします!神谷さんは研修企画の初期メンバーだったんですよね?

こちらこそよろしくお願いします。そうですね、入社直後は就職情報事業部の横浜支社で営業をしていましたが、1年後に新たに立ち上がった研修企画の初期メンバーとして異動しました。そこからは、さらに人事コンサルティング課というチームを立ち上げて2016年まで働いていました。

ーマイナビ在籍中に大学院にも行かれていましたよね?

はい、入社5年目くらいから大学院に通学していました。経営学、特にリーダーシップ開発を学んでいました。ちょうどその頃、人事コンサルティング課も軌道に乗って拡大フェイズに入っていたのですが、私としてはもっと売上単価をあげたかったんです。そこで大学院に通学を決めました。学んだことを活かして、より本質的な企業課題と向き合うようになっていきました。

一方で、企業の本質的な問題と向き合うほど、営業を主体とする事業部のビジネスモデルとは離れていきました。部内では、人事コンサルティング課として進めているビジネスをどこまで会社として認めるべきかという議論も一部あったようです。私自身は仕事にやりがいを感じていたので、それであればマイナビを出て自分自身でやってみようと思って独立をしました。31歳の時です。

ー31歳で独立・・!独立後は順調だったんですか?

マイナビ社とビジネスパートナー契約を結んでから退職をしたので、マイナビ社経由で仕事はたくさんいただきました。また、退社と同時に3社ほどから声がかかっていて外部アドバイザーのような立ち位置でお仕事はありました。お陰様で順調でしたが、私は売上も組織も必要以上に大きくしようとは思っていないんです。自分が関心を持って取り組める仕事を妥協なく進めていくことが大切だと考えています。

生活者の中に入る、エスノグラフィーとは?

ーでは今のお仕事の”リサーチ”についてお聞きしたいんですが、具体的に言うと何を調査するんですか?

弊社が得意としているのはマーケティングリサーチや人事リサーチなどの調査です。例えば、企業が新しく子供用スイーツの商品を企画するとします。その時にどのようなスイーツがいいかを商品企画の人は考えるわけですが、ここで消費者のニーズをリサーチするために依頼が来るのです。私はエスノグラフィーというアプローチ手法を取っていて、これは簡単に言うと当事者として調査対象の人たちの生活空間の中に入っていって、自分もその一員になって彼らのニーズを学んでいくというやり方です。先ほどのスイーツの例でいうと、小さいお子様がいらっしゃるご家庭に協力してもらい、私もその家庭の中に入って子供と一緒にスイーツを見たり、開封してみたり、食べてみるのです。すると、味よりも冷たさやデコレーションなど、体感的・視覚的な要素の方が子供たちの「おいしい」を刺激していることに気づいたりします。

ーはーなるほど・・・そういうのをエスノグフィーというのですね。

エスノグラフィーは文化人類学的なアプローチで、「調査対象者のいるフィールドに参加する」のが基本的なコンセプトです。文化人類学や社会学では、未開の地の先住民族やストリートギャングなど、既存の調査アプローチでは測れないような対象に対して実施することが多いんです。私は大学院時代にこの手法に出会いました。やはりそこの「中」に入らないとわからないことってたくさんありますからね。中に入って得られたインサイトをもとに仮説をたて、その仮説検証をするために定量的な調査を行い、回収したデータを分析してクライアントの開発・企画業務や人事施策に活かしていただく、というのが弊社の仕事です。

ーとても面白いですね。気になるのが、エスノグラファーとして中に入っている時の神谷さんの人格やアイデンティティーはどうなっているんですか?調査中は別人格になっているんですか?俳優のようになりきるんですかね?

面白い質問ですね。そうですね、神谷俊としての人格とその「中」の人物の人格の半分ずつ、という感覚かもしれません。神谷俊のままでは客観的な視点しか持つことができません。調査対象が本当に大切にしているものが見えてこない。他方で「中」の人になってしまうと、すべてのことが「当たり前」「常識」に見えてしまうので、調査対象の特徴を捉えることができなくなってしまいます。外からやってきた自分と、内側で過ごしている「自分」のあいだを揺れ動きながら、調査を進めます。

ー机上の空論ではなく当事者の感覚に近い調査データは確かに貴重そうですね。引き合い、多そうです。

ビジネスとして考えると難しい部分があるんですよ。誰でもできるというものでもなく、マニュアル化できるものではないんです。だから会社経営の立場で考えると量産はできませんし、エスノグラフィーは売上の中心にはなりません。好きだからやっているって感じですね。実際、弊社の売上の多くはエスノグラフィーに付随するような定量調査やデータ分析です。

ーなるほど・・・。属人的になってしまう側面はあるのですね。でも、社名はそのものズバリで株式会社エスノグラファーですよね?

そうですね、そこは仕事に対するスタンスの表れです。僕は常々「アマチュア」でいたいなと思っています。エスノグラフィーをする際も「アマチュアリズム」を意識しています。専門家を気取って調査対象のフィールドに参加しても、本質を理解することができないからです。「プロフェッショナル(専門家)」になるということは、専門家ならではの思考様式や視点で考え、解釈しますからね。逆に言えば、そこから離れることはできなくなってしまう。「自分は、何も知らない」というマインドセットを持つことでしか、見えないことがあります。

プロにならずに常にアマチュアとして学び続けていく。新しい世界に触れ続けていく。そうした僕の仕事のスタンスを込めて「エスノグラファー」という社名にしています。これは僕の美意識のようなものです。

創造性と教育をアップデートしていく

神谷さんの著書「遊ばせる技術」

ーいや、そのこだわり、スタンスが面白いですね。あと、これはアルムナイの皆さんに聞いているんですが、マイナビ時代の思い出とか学んだことってありますか?

僕は9年間マイナビにいたんですが、ずっと自由に、好きにさせてもらったので、組織に所属していた感覚は実はあまりないんです。大学院に籍を置いていたことや、歴代の上司の皆さんが「お前は、『外』を見て仕事しろ」と言ってくれたことが影響していると思います。社内の人よりも、社外の人と関わることが多かったと思います。

多様な分野や知識に触れる機会を常に許容し、「野放し」にしてくれていたことに本当に感謝しています。今のビジネスを進める際の基本はすべてマイナビ時代に修得したものだと思いますね。

また、マイナビを辞めてから、いろいろなマイナビ社員の人が声をかけてくれて、仕事の相談をくれるのが驚きでした。そうか、僕はこんなにたくさんの人たちと繋がっていたんだなと、外に出てから改めて実感していますね。あまり社交的ではなく、積極的に皆さんと関わることは少なかったはずですが、皆さんは僕のことを覚えていてくれて、とてもよくしてくれます。これは本当に感謝しています。

ーありがとうございます。それではそんな神谷さんの今後の展望について教えてください。

今は創造性に興味があります。クリエイティビティを持つ人材をどのように増やしていけばいいのか。クリエイティビティは「才能」や「先天的な資質」と見なされてしまうことが多いのですが、実はそうではないことが科学的には検証されています。創造性は、育成可能な資質です。日本企業において、いかにクリエイティビティを発揮する人材を増やしていくか?ここと向き合っていきたいですね。

また教育のアップデートの必要性にも関心があります。「これからの人材は…」といった文脈で、様々な資質が求められるようになっていますが、教育機関の諸機能がこれに追いついていない印象です。アクティブラーニングは高等教育でも導入されていますが、教育効果の検証や精緻化プロセスはまだ未成熟だなと。この部分にメスを入れて、アップデートをはかりたいと思っています。あ、一つ告知いいですか?

ーはい、どうぞ!

実は2021年に「遊ばせる技術(日経新聞出版)」という本を出版したのですが、その2冊目を現在執筆中なんです。2冊目のテーマは「イレギュラーに適用できる社員は何が違うのか(仮)(技術評論社)」。ビジネスが複雑化している今、職場ではイレギュラー対応が頻繁に起こっています。しかしその都度、若手が管理職に相談をすることで管理職がパンクしつつあります。この背景を踏まえ、イレギュラーに対応できる社員は何が違うのか、をテーマに書いています。来年の春までには出したいので、興味がある方はぜひ読んでみてください。

ーありがとうございます!ではとりあえず1冊目のリンクを貼っておきますね!今日はありがとうございました!

「遊ばせる技術」はこちら

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